取材現場から
 人気連載・佃一輝先生の「至福の煎茶」特別編として11月号からスタートした「中国・煎茶の旅」。今回は、蘇州の田園と街中の取材こぼれ話を美しい写真とともにご紹介いたします。



文人憧れの地・「蘇州」~しみじみ、取材こぼれ話~

今月の担当者/梅原典子(本誌編集部)

本誌11月号から始まった『「至福の煎茶」特別編 佃一輝氏と中国・煎茶の旅』はいかがでしたでしょうか。多くの傑出した文人を生み出し、また文人たちを虜にした「蘇州」の旅は、誌面 でお伝えしきれなかったこぼれ話がたくさんあります。本誌と合わせてお楽しみください。

現場写真
<石湖の風景>

本誌11月号でもご紹介した蘇州の西の郊外にある「石湖」。ここは蘇州の中でも私のイチオシの場所です。のびやかに広がる、何の起伏もないこの場所は文人がとても好んだ風景。写 真で見るとなんでもない風景に見えるかもしれませんが、ここに座ってぼぉっとしていると、本当に穏やかで豊かな気持ちに(この景色を肴に、一日中ワインでも飲んで過ごしてみたい…)。文人が愛した理由がわかるような気がします。この日、天気はずっと曇りがちだったのですが、これくらいあやしい雰囲気のほうが風情があるのかも。

現場写真
<蓮のアップ>

夏場のロケだったので、石湖書院には見事な蓮が。何とかして雨露を含んだ蓮のカットが撮りたくて一生懸命水を注ぎましたが、葉が弾いてしまってうまくいきませんでした。実はこの蓮はとても背が高く、踏み台を使って上からじょうろで水を注ぐなど結構苦労したのです…。それにしても気高く美しい蓮でした。

現場写真
<菱の実採り>

太湖の島、西山での菱の実採りの様子。菱の実はこの辺りの名産で、たらいのような大きな桶にのって採るそうです。ふかした菱の実は、里芋と栗の中間のようなほっくりした感じで、自然な甘味があり非常に素朴な味でした。

現場写真
<太湖の夕景>

ロケの間ずっと、太陽があかあかと沈みゆく夕景を待っていました。しかし天気に恵まれずもうあきらめかけていた最終日、太湖大橋をロケバスで走っていると、先ほどまでの大雨が嘘のように一瞬だけ太陽が顔を出したのです。「今だ!」と慌てて車を降り、カメラマンにおさえてもらったカットがこれ(本誌でも使用しています)。待ちに待った夕景は本当に美しく、とても印象に残っている一枚です。

現場写真
<藝圃>

12月号でご紹介した藝圃の別カット。手前の穴があいている白い石は、太湖からとれる「太湖石」といってほとんどの庭園に使用されています。蘇州の街中にはこのような庭園がいくつもあって、中では近所の人が集まって太極拳をしたり、お茶を飲みながら語らったり。観光場所としてお金を払って見ることができます。この藝圃は観光客も少なくあまり知られていない庭園のひとつです。

現場写真
<花窓>

これは「花窓」といって、蘇州の庭園建築の特徴のひとつ。こういった飾り窓にはたくさんの種類があって、この花窓を中心に庭園を見てまわるのも面 白いかも。くり抜かれた窓から眺める、部分的な風景の味わいもまた格別 です。





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